2021.01.22コラム
安倍晋三と潰瘍性大腸炎

安倍晋三と潰瘍性大腸炎の投稿画像01
安倍晋三と潰瘍性大腸炎の投稿画像02

コロナの第3波で大揺れの日本列島ですが、その一方で先日総理を辞任した安倍さんに火の粉が降りかかっています。“桜を見る会”の前夜祭での費用が政治資金規正法に抵触するとの事です。総理在任中はうやむやにしましたが、退任してからはそうは行かない様です。本人への取り調べがあるかも知れません。そうなると過度のストレスや過労でまたまた持病の悪化が考えられます。病名は言わずと知れた“潰瘍性大腸炎”です。一期、二期の辞任も、持病の悪化が原因でした。学生の頃からずっと闘病を強いられていたそうです。
もう皆さまはTVやネットでよくご存じだと思いますが、ここでおさらいの意味を兼ねまして、今一度“潰瘍性大腸炎”の勉強をしてみましょう。

<概要>
腸や消化管の粘膜に炎症が起きる疾患です。大腸だけに炎症が起きる場合を“潰瘍性大腸炎”、小腸や他の消化管に起きる場合は“クローン病”と呼びます。
発症の原因はまだ判っていません。只、免疫異常であることはまちがいありません。
国の指定難病に定められていて、病状によって医療費助成の対象となります。但し医療受給者証の有効期間は1年なので毎年申請の必要があります。患者数は約18万人で年々増加しています。
症状としましては、継続的に起こる激しい下痢、血便、強い腹痛、発熱などです。
好発年齢は20~30歳です。最近では40代以降でも発症するようになりました。
男女間の性差はありません。軽症~中等症は97%、重傷は3%となっております。
症状を2期に区別して考えます。症状が強く表れる「活動期」と症状が治まっている「寛解期」です。
通常「活動期」で治療を行い「寛解期」の状態にもっていき、維持量の薬を継続服用し、その状態を保つ様にするのがベストです。しかし再熱を起こし「活動期」と「寛解期」を繰り返す人もいます。
大腸粘膜の炎症は直腸から始まり上方向に向かって広がります。その広がり具合により3つのタイプに大別します。「直腸炎型(22%)」「左側大腸炎型(37%)」「全大腸炎型(38%)」
炎症が広いほど重症という事です。

<検査>
問診を行い(下痢の回数、便の正常、血便の頻度と程度、腹痛の程度、発熱等)
次いで便潜血検査、血液検査(CRP、TP、ALB、HG、等)
最後に大腸内視鏡検査及び生検
以上の検査で確定していきます。

<治療>
薬物療法がメインと成ります。昔に比べると薬が良くなり治療法も確立されてきましたので治療効果が随分上がっています。
・5-ASA剤(ペンタサ、アサコール、リアルダ、サラゾピリン等)
軽~中等症の治療の中心となる薬剤です。体内で有効成分が溶け出し効果を発揮します。溶け出す場所を変えることによって薬の効き目をより強くする事が出来ます。色々な剤型が作られ、より治療効果が上がるように創意工夫がなされています。その為、「活動期」から「寛解期」に導入できます。その後寛解維持療法で継続服用します。この薬はきちんと飲むことで再熱を防ぎます。
・ステロイド剤(プレドニン他)
5-ASA剤でコントロール出来ない難治性の中~重度の患者に使用します。ステロイドは副作用の心配をされる方が結構いらっしゃいますが、経験のある専門医のもとで必要な期間、必要な量を使用された場合は大丈夫です。ただ活動期にはよく効きますが寛解を維持する効果はありません。(ステロイド依存)
・免疫調整剤(イムラン、アザニン、ロイケリン他)
ステロイド抵抗性、ステロイド依存性の症例に使用します。特にステロイド依存性に用いることが多いです。88%の患者さんに寛解維持ができたというデータがあります。ただ骨髄抑制の副作用がありますので専門医の指示に従ってください。
・生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ)
炎症性サイトカインTNF-αを阻害します。ステロイド抵抗性、ステロイド依存性に使用します。副作用として結核菌やB型肝炎ウィルスの活性を起こし再熱させます。
他に血球成分除去療法や手術療法があります。

最終的に「寛解期」の維持が目的となるわけです。5-ASA剤がベースに成ります、他の薬剤を併用する場合もあります。いずれにしても決められた量をきっちり飲む様にして下さい。

<合併症>
腸管の狭窄、大量出血、足の関節炎、大腸癌のリスク増加

<その他>
妊娠、出産は問題ありません。但し「活動期」は流産、早産のリスクが高くなりますので計画出産が良いでしょう。病気の遺伝はありません。
大腸内視鏡検査は、胎児への刺激が強いので避けましょう。治療薬の中には母乳へ移行するものがありますので注意してください。又、男性の場合、精子が減少する薬もあります。

日常生活では以下のことに注意してください。
・ストレスはため過ぎないように。
・過労、睡眠不足に注意
・活動期では長期の旅行、激しい運動は控えめに
・風邪薬や抗生剤を飲む際は医師、薬剤師に相談


潰瘍性大腸炎は、はっきりした原因は不明ですが、免疫が関わっていることは間違いありません。免疫を正常にすることが必要であると思われます。

免疫は過剰であっても過少であっても体のバランスはとれません。常日頃から規則正しい生活習慣、食事、十分な睡眠等で体の抵抗力をつけましょう。
体温が平熱で35.6℃以下の人は、良くないです。ご相談ください。
何だかんだと言っても、最も大事なのは豊かな心、ゆとりある心かもしれませんね。