2021.07.01コラム
新型コロナの変異ウイルス
コロナの勢いが収まりきらない中、東京オリンピック、パラリンピック開始まで1カ月を切り秒読み段階に入ってきました。感染対策が完全に出来てない状態でのイベントなので国民の大部分がパンデミックを危惧してるようです。果たしてどうなることやら?
こうなると一人でも多くの人がワクチン接種を行っているかどうかが問題になると思います。後の頼みはやはりコロナワクチンになるんでしょう。当然、予防対策も必須です。
さて、ここにきてコロナは新規感染者もかなり下がり収束の兆しが見えてきた感じがしていましたが、又じりじりと増加してきています。これはどうやら変異ウイルスが原因と思われます。各地で新しい変異ウイルスが次々と発見されて、それらの実態が徐々に解明されて来ており、従来のものより厄介なウイルスであるようです。
今回はその変異ウイルスについて考えてみましょう。ウイルスは、細菌と違って単独で増えることはできません。必ずホスト(人,生物)の細胞に入り込み、その細胞の材料を使ってどんどん複製をつくり増殖していきます。このときにウイルスの遺伝子が大量にコピーされますが、何度もコピーを繰り返すうちにミスコピーが起こりアミノ酸配列が変わってきます。これが変異ウイルスです。
ウイルスのような下等な生命体はミスコピーが非常に多い様です。大体2週間に1度ゲノム変異を起こすと言われています。つまり1年間に24回変異を起こすようです。新型コロナウイルスは他のウイルスより賢くて変異に気が付くとまた元へ戻すことがたまにあるようです。変異したウイルスは感染力や病原性が、従来のものより高いと言われています。これは至極当たり前のことで、ホストに感染しやすいものが、しにくいものより優位に立つ、また病原性の少し強いものが弱いものを淘汰する(強すぎるとホストを殺すので…)変異はミスコピーが原因ですから感染力の強いものや弱いものが出来てきます。また病原性の強いものや弱いものが生まれてきます。その中で強い変異ウイルスだけが生き残りどんどん増加していくわけです。その結果、感染者が増加していきます。
[主な変異ウイルスの種類]
以前はイギリス型とかブラジル型とか呼ばれていましたが、特定の国への差別的な扱いを避けるためα,β,γ,δと呼ぶようになりました。全てスパイクタンクの変異です。
●α型(イギリス型):N501
スパイクタンクの501番目のアミノ酸がアスパラギンからチロシンに置き換えられたウイルスです。感染力が1.3倍、病原性は少し高くなってるいるが数値は不明。ファイザー製、モデルナ製のワクチンは効果あり。アストラゼネカ製は少し落ちます。実行再生産数は41%高くなっています。
●β型(南アフリカ型):E484K,N501Y
スパイクタンクの484番目のアミノ酸がグルタミンからリシンに置き換えられたウイルスです。N501Yの変異も含まれています。感染力が1.5倍、病原性も少し高くなっている。E484Kは免疫やワクチン効果を低下させる働きが有り。ファイザー製、モデルナ製のワクチンは効果あり。アストロゼネカ製は効果が少ないとの報告があります。実行再生産数は36%高くなっています。
●γ型(ブラジル型):E484K,N501Y
β型と同じE484k,N501Kが変異しています。感染率が高くなり、抗体の攻撃から逃れる性質も持つため再感染やワクチン効果の低下が懸念されます。南アフリカ型と同じと考えてください。ファイザー製、モデルナ型は効果が有り、アストラゼネカ製は効果の減弱が考えられます。
●δ型(インド型):L452R,E484Q,P681R
WHOは警戒度の最も高い<懸念される変異株>に位置付けています。特にアジア系人種の免疫やワクチンの効果を低下させる作用が強いと言われています。L452Rが日本人の6割に強く働くとのことです。原因は白血球の型によるとされています。日本人の6割が保有するHLA-A24のタイプが影響を受けるようです。その結果感染しやすくなるわけです。実行再生産数は1.92です。ワクチンの効果はファイザー製、モデルナ製のどちらも効果はやや落ちて88%、アストラゼネカ製は60%という報告があります。また詳細はこれからでしょう。
[小児に対する感染力]
特に子供に限って感染率が高いという方向は有りません。例えばα型について考えれば通常ウイルスの1.32倍感染率が高くなるので必然的に子供の感染者数も増えます。更に言えば子供は感染対策が成人に比べ下手です。手洗いやマスクが大人ほど確実に出来ません。感染力が強ければ、マスクの装着の悪さに付込むという事はあるかもしれません。従来のコロナウイルスと変異ウイルスとを比べてみても成人と小児との感染比率はほとんど変わらないようです。つまり子供に正しい手洗いとマスクの装着を教え込めば問題ないという事です。
最後に変異ウイルスの感染の凄さを世界一のコンピューター(富岳)でシュミレーションした結果が公表されましたので概要を載せておきます。
理化学研究所チームは、新型コロナウイルスの飛沫の広がりを調べ感染リスクを調べました。変異ウイルス個々の感染率を仮定し、部屋の広さ、人の配置、換気の状態、マスクの有無、話し声の大小、時間経過を設定し富岳にシュミレーションをさせ個々の人の感染率を計算しました。1.5m離れた場合は3種類のウイルスは同じで感染率も半分以下になります。接触時間で比較してみるとδ型を1とすると従来のウイルスは2.3倍、α型は1.7倍かかります。ダクトなどで換気を強くするとどのウイルスも感染率が大幅に下がります。飛沫の広がり方を可視化したCGからはエアコンやダクトをつけると全体的に空気の流れが出来、ウイルスが拡散していくことがわかります。又、パーテーションを設置した条件で計算すると換気装置だけの状態に比べると80%リスクが削減出来ました。この事は、現在行っている予防対策が間違ってないことを証明していると思います。コロナウイルスが手に負えない変異ウイルスになる前に是非収束させなければなりません。
その為にはワクチンの効果があるうちにできるだけ多くの人がワクチン接種する必要があると思います。(もちろん、アナフィラキシー反応起こしそうな人は無理ですが)収束するまでは、決して予防対策を怠らないようにする事。
世界中に1日でも早く平穏な日がきますように…。
矢鍋 文雄